本記事は、このような方に対して書いています。
私は中年です。ハンドルネームは、朝比奈宗平。私――朝比奈は映画好きで、4歳から映画を見ています。もはや何作見たのか分かりません。
そんな朝比奈は、ドラえもん映画を全部見ています。
そのような訳で、本記事では映画「ドラえもん のび太と空の理想郷」をレビューすることにしました。また、のび太と空の理想郷について(まだ世に出ていないと思われる)考察もしています。
映画ドラえもん「のび太の地球交響楽」が公開されるまでの間、もう一度「のび太と空の理想郷」をご覧になってみてください。
なお考察に関してはネタバレを含みますので、未視聴の方の閲覧はご遠慮いただけますよう、よろしくお願いします。
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のび太と空の理想郷の詳細
のび太と空の理想郷について、次のように紹介します。
このように3つに分けて紹介します。
のび太と空の理想郷の概要
のび太と空の理想郷の概要を表にまとめました。
▼のび太と空の理想郷の概要表
項目名 | 内容 |
---|---|
公開日 | 2023年3月3日 |
収入 | 43億4000万円 |
監督 | 堂山卓見 |
脚本 | 古沢良太 |
音楽 | 服部隆之 |
主題歌 | NiziU『Paradise』(ソニー・ミュージックレーベルズ) |
テーマ | 自分らしさ |
主な舞台 | 空、パラダピア |
原作の有無 | なし。オリジナルストーリー |
ワクワク要素 | ★★★☆☆ |
ホラー要素 | ☆☆☆☆☆ |
ハラハラ要素 | ★★★☆☆ |
泣ける要素 | ★☆☆☆☆ |
アクション要素 | ★☆☆☆☆ |
のび太と空の理想郷の概要は、このような感じです。
本作の脚本は、「探偵はBARにいる」シリーズやコンフィデンスマンJPシリーズなどの古沢良太さんです。そのため本作は見ごたえのある、そしてオールドファンにとって嬉しい脚本になっています。
のび太の地球交響楽の登場人物&キャスト
のび太と空の理想郷の登場人物とキャストは次の通りです。
- ドラえもん:水田わさび
- のび太:大原めぐみ
- しずか:かかずゆみ
- ジャイアン:木村昴
- スネ夫:関智一
- ソーニャ:永瀬廉
- マリンバ:井上麻里奈
- ハンナ:水瀬いのり
- 未来デバートの配達員:山里亮太
- パラダピアの学校の先生:藤本美貴
- 三賢人サイ:園崎未恵
- 三賢人ポーリー:石井康嗣
- 三賢人カルチ:村瀬歩
- レイ博士:中尾隆聖
のび太と空の理想郷の登場人物とキャストは、このようになっています。
各登場人物の詳細は、下記をご覧ください。
ドラえもん:水田わさび
本作のドラえもんの役割は、メインです。
のび太:大原めぐみ
しかしドラえもん〇〇後、メイン(キャンベルの原質神話論の神格化)に変化します。そもそも本作の場合、のび太とドラえもんのダブルメイン(ダブルバディ)になっていると考えた方が良いのでしょうか(本作は、いろいろと少し複雑な作りになっているように思います)?
しずか:かかずゆみ
しずかちゃんの役割は、ウエットブランケットです。のび太の引き立て役になっています。
ジャイアン:木村昴
ジャイアンの役割は、しずかちゃんと同じです。
スネ夫:関智一
また過去作と同様、本作でも重要な役割を担っています。ただ過去作と違う手段をとっているので、少し分かりにくくなっています。
ソーニャ:永瀬廉
ソーニャは、ゲートキーパーとして登場します。
そのため第二幕後半(だったと思います)に、あのような行動をとるという訳です。
しかしソーニャはパーフェクト猫型ロボットなので、完璧でない猫型ロボットのドラえもんのシャドウも兼ねているようにも思えるのですが、どう思います?
しかもドラえもん〇〇後には、彼の代役(キャンベルの原質神話論の神格化。それにしてはタイミングが遅い)までこなします。
いくら何でもメチャクチャ。
マリンバ:井上麻里奈
マリンバの役割は、〇〇です(ネタバレになり過ぎるので自主規制します)。
役割と関係ありませんが、マリンバは「のび太の魔界大冒険」の美夜子さんのオマージュ的な登場人物です。そのため、あんなことになるという訳です。
また見た目は、役割の〇〇繋がりで、ある作品の有名キャラクターのようになっていると考えています。
ハンナ:水瀬いのり
ハンナの役割も、マリンバと同じく〇〇です。
未来デパートの配達員:山里亮太
未来デパートの配達員はモブキャラです。
しかし、山里亮太さんの演技力には驚きました。
個人的には、ドラえもんと配達員のやり取りの演出は伏線になっていると考えています。そのため、棒読みのタレントさんでは演じることができない重要な登場人物なのです(個人的には、今回のゲストキャラの中で一番重要かつ責任の重い役だと思っています)。
筆者がキャスティングする立場ならタレントさんと使わず、手堅く野沢雅子さんや三ツ矢雄二さんなどの大御所を起用します。
そんな重要な役を見事にやりきった山里亮太さんは、本当に只者ではないと思いました。
パラダピアの学校の先生:藤本美貴
パラダピアの学校の先生は、モブキャラです。
三賢人サイ:園崎未恵
三賢人サイの役割は、△△です。いかにも悪役然としていないところが良いですね。
三賢人ポーリー:石井康嗣
三賢人ポーリーの役割は、△△です。いかにも悪役然としていないところが良いですね。
三賢人カルチ:村瀬歩
三賢人カルチの役割は、△△です。いかにも悪役然としていないところが良いですね。
レイ博士:中尾隆聖
レイ博士の役割は、〇〇です。そんなことよりも中尾さんを起用するとは、なんと贅沢なキャスティングなんでしょう。
だからなのかレイ博士のアレが、フリーザのアレにしか見えないんですよね(多分、ドラゴンボールのオマージュだと思います)。
のび太と空の理想郷のあらすじ
ある日、のび太は学校で出木杉からユートピアの話を教えられ、自分もそんな理想郷で暮らしたいと思う。昔から各国にユートピアの作り話があり、ユートピアを探してみることにする。家で壊れた道具を整理しているドラえもんを見たのび太は、0点のテストを「四次元ゴミ袋」に投げ入れようとするが、ドラえもんに止められる。裏山でのんびりしているのび太は、青い虫で目が覚め、空に浮く三日月形の島に気付く。そこでドラえもんは「タイムツェッペリン」を購入し、しずか・ジャイアン・スネ夫を加え、天気雨が降って虹が出た時、5人で裏山からユートピアを探す旅に出る。
のび太と空の理想郷のレビュー(評価)
のび太と空の理想郷のレビューは、次の4つの項目に分けて行うことにしました。
- 脚本
- 絵
- 音楽
- ゲスト
この4つに分けて、のび太と空の理想郷をレビューします。
脚本
ほぼ悪い所がない素晴らしい脚本だと思いました。
ちなみに本作の脚本で悪いと思ったところは、オープニングイメージとレゾリューションです。
オープニングイメージは、空に浮かぶパラダピアや暮らしている人々の様子、そしてパラダピアに侵入する怪しい人影、パトロールするソーニャを順をおって登場させる方が、映画の内容が伝わりやすい良いと思いました。
そうすることにより、本作の弱点の一つである第一幕で「主要人物」全てが紹介されていないという点を解消できます。
またオープニングイメージが「出オチ」になっており、今後起こるであろう出来事が用意に予測できます。そのため、第一幕に張り巡らされた伏線が無駄になっていると感じましたし、真実が明らかになったとき全く驚きませんでした。
レゾリューションについては、ドラえもん映画の過去2作品のオマージュになっていますが、2つめの方が蛇足になっています。そのため感動は薄れていますし、その登場人物に〇〇させる必要性もないように思いました。
ちなみに2つめの過去作のエンディングが、あのようになっているのは伏線があるため、観客がエンディングの可能性に納得できるようになっているからです。
本作の場合、その結果に対する伏線はなく、アレだけが残る――しかも上空から落ちてきたのに〇〇〇が無事――というのは都合が良すぎると思いました(しかも〇〇〇は、どちらにしても△△がなくなります。正しくは補助記憶装置。つまり〇〇〇では復元できません)。
大山のぶ代さん版ドラえもんのセリフを借りるなら「それをやっちゃ、お終いだよ」ですね(ただ後述するドラえもん映画らしさの体現やソーニャが本来の姿に戻る過程だとすれば、あのようなレゾリューションにしていると理解できます)。
しかし、これらを除けば近年まれに見ない本当に素晴らしい脚本でした。
そして、ドラえもん映画の過去作のオマージュを、「これでもか」というくらい入れて下さって本当にありがとうございます。
絵
とても綺麗でした。
登場人物も、アクションも、背景も、メカニックも、構図も何もかもクオリティが高かったと思います。
音楽
音楽も良いと思いました。
贅沢を言えば、アニメ第2作第1期シリーズのときのような「おどろおどろしい」音楽を差し込む方が、メチャクチャ緊張感が生まれて良いと思います。
主題歌に関しても悪くないと思います。映画と主題歌のタイトルがリンクしていますし。
ゲスト
個人的にタレントさんの声の演技は、アニメ映画の品質を損ねるので、キャストに起用すべきでないと考えています。
しかし、本作に出演されたタレントの皆さんの演技には良い印象を持ちました。吉田鋼太郎さんや千秋さんほどではありませんが、お三方ともお上手です。
ただテーマ「らしさ」を意識して本作を作られているなら、タレントさんを起用せず、声優の方だけでキャスティングした方が良いでしょう。その方が、よりテーマを追求した作品になっていたと思います。
そして本作を期に、そろそろゲストの集客力に頼らず、作品だけで勝負してほしいですね。
のび太と空の理想郷の感想
個人的には、アニメ第2作2期シリーズ(通称わさドラ)になってからのドラえもん映画の中で屈指の面白さでした。
まず驚いたのは、初期のドラえもん映画を彷彿させる「静かに迫ってくる脅威」です。
それを、近年のドラえもん映画に期待していなかったので、本当に驚いたし震えました。
他にも過去作を彷彿させる展開やオマージュに、思わず声を上げそうになりました。
多分、藤子・F・不二雄先生の脚本のアイデアをたくさん盛り込んだからだと思います。
しかし終盤のアレは「ない」方が、映画作品として良かったと思いました。
ちなみにアレは、ドラえもんのお約束のことではありません。
のび太と空の理想郷のネタバレ考察
のび太と空の理想郷の次のことについて考察してみました。
- 過去作のオマージュ
- 過去作との繋がり
- ソーニャに関すること
それぞれの考察ついては、下記でご確認ください。
考察1:過去作のオマージュ
のび太と空の理想郷には、第2作1期シリーズのドラえもん映画のオマージュが随所に見られます。
過去作 | 内容 |
---|---|
のび太の恐竜 | タイムツェッペリンに関する出来事 |
のび太の宇宙開拓史 | のび太の射撃、パオパオ |
のび太の大魔境 | 出木杉くんの説明 |
のび太の海底奇岩城 | ソーニャ、エンディング間近のしずかちゃんのポーズ |
のび太の魔界大冒険 | 虫、雨、マリンバ、物語の仕掛け |
のび太の小宇宙戦争 | ピリカの宇宙船、新聞 |
のび太と鉄人兵団 | どこでもドアのシーン、とあるシーン、レイ博士の髪型 |
のび太と竜の騎士 | 避難所になる広い空間 |
のび太の日本誕生 | タイムパトロール、雪、クリオネラと土偶 |
のび太とアニマル惑星 | 理想郷、マリンバ、お手洗いで目を覚ます「のび太」 |
のび太のドラビアンナイト | 船の購入、案内人としてのソーニャ |
のび太と雲の王国 | 過去作とのリンク、ドラえもん〇〇、マリンバの衣装 |
のび太とブリキの迷宮 | ドラえもん〇〇 |
のび太と夢幻三剣士 | 自由を奪われるメインキャラクター、ソーニャと四次元ポケット、ビッグライト |
のび太の創世日記 | 昆虫 |
のび太と銀河超特急 | タイムツェッペリン内部 |
のび太のねじ巻き冒険記 | 敵対者の中にいる善人 |
のび太とロボット王国 | ドラえもんのセリフ「猫型ロボットは人間の友達」 |
のび太の南極カチコチ大冒険 | パオパオ |
のび太の宝島 | 狂った博士 |
のび太の月面探査記宮の月面探査記 | 月、パラダピア |
のび太の新恐竜 | 新恐竜の島が登場 |
筆者が気づいただけでも、これだけの過去作のオマージュが随所にありました。
また、「スターウォーズ」や「ドラゴンボール」などドラえもん映画以外の作品のオマージュらしきものも随所にあります。それらを探しながら本作を見れば、きっと楽しいと思いますよ。
多分、これらのオマージュは本作の「らしさ」に関係していると思われます。
近年のドラえもん映画は、「クレヨンしんちゃん」や「ONE PIECE」、はたまた「STAND BY ME ドラえもん」を意識するあまり、「ドラえもん映画らしさ」が失われています。
例えば「クレヨンしんちゃん」や「STAND BY ME ドラえもん」の泣き要素。そして「のび太の新恐竜」で顕著だった、のび太のルフィ化(ONE PIECE)。
これらを真似して作品に取り入れたため、近年のドラえもん映画は単なる「お涙頂戴」になったり、登場人物の行動に説得力がなくなったりしてしまいました。
また前作「のび太の小宇宙戦争2021」では、原作のテーマ――つまり藤子・F・不二雄先生というドラえもんらしさ――が排除されています。
それを懸念した藤子・F・不二雄プロもしくは脚本の古沢良太さんが、過去作のオマージュをふんだんに入れることにより、ドラえもん映画らしさを取り戻そうとしたのではないでしょうか?
ドラえもん映画は、それ自体――ドラえもん映画らしさ――が素晴らしいんだと。
つまり物語の内容だけでなく、過去作のオマージュによって本作のテーマを伝えているのではないかと思いました。
また他所の作品の真似をするよりも、本作のように隠し味程度にオマージュするよう自戒を込めているのかもしれません。
例えば本作なら中尾隆聖さんを使うことによって、直感的に敵対者だと分かります。そしてレイ博士をアレに乗せることにより、自然と「ドラゴンボール」の彷彿させることができます。
マリンバや本作のオマージュの詰め方も然りです(マリンバは峰不二子、オマージュの詰め込み方は、スターウォーズのエピソード7のオマージュだと思います)。
本作のように他所の作品を単に物真似せず、ドラえもん映画らしさを追求しようとされているのであれば、今後のドラえもん映画は面白くなりそうですね。
考察2:過去作との繋がり
本作では、本作と過去のドラえもん映画の繋がりを確認することができます。
過去作 | 内容 |
---|---|
のび太の宇宙開拓史 | タイム新聞にパオパオが登場 |
のび太の南極カチコチ大冒険 | タイム新聞にパオパオが登場 |
のび太の新恐竜 | タイム新聞に新恐竜の島に関する記載 |
のび太の小宇宙戦争2021 | ピリカの宇宙船が登場、タイム新聞にピリカに関する記載 |
このように本作では、本作と過去のドラえもん映画が地続きであることを確認できます。
またドラえもん映画ではありませんが、タイム新聞に「7000万年前の地表からオカリナが発見」という記載があることから、テレビアニメドラえもん誕生日スペシャル「クジラとまぼろしのパイプ島」とも地続きになっているようです。
実は、過去作との繋がりは大長編ドラえもんのオマージュになっています(映画では、初見の方でも内容を分かるようにするため、過去作との繋がりはカットされています)。
多分、過去作との繋がりも先述の過去作のオマージュと同じく、ドラえもん映画らしさを表現するためのものではないでしょうか?
考察3:ソーニャに関すること
ネットにある本作の考察に、少し気になる「取り上げられたソーニャの四次元ポケット」のものがありました。
(奴隷=クリオネアだったりソーニャだったりするのかな。四次元ポケットを取られたり、腕輪はその象徴だよね。ちなみにクリオネには脳がない)
引用:beautiful world「『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』考察感想~君だけの色も形も優しさも強さも~」
こちらの考察を否定するつもりはありません(多分、心や自分らしさを失うことを、考察主さんは奴隷と表現されているのだと思います)。
しかし奪われた四次元ポケット(ソーニャの心や自分らしさの喩え)に関しては、ダンデスのモチーフ素のうち「欠如 → 回復」の欠如にあたり、ポケットを回収することによってソーニャが本来の姿に戻ることを現わしています。
また腕輪は、民族学者ファン・へネップによる通過儀礼「分離 → 移行 → 再統合」の移行プロセスにおける、「成長の過程で一時的に大人にしてくれるアイテム」です。
先述の考察主さんの言葉を借りると、ソーニャの腕輪は偽りの姿の「象徴」にあたります。
ちなみにソーニャに与えられたのは腕輪だけではありません。改造とパラダピアの警備員という役割も与えられていましたね。
この3つを与えられたことにより、ソーニャは一人前に役目を果たせるようになっていたという訳です(これは、千と千尋の神隠しや民話の姥皮と同じ)。
つまり腕輪を壊し、自分の四次元ポケットを取り戻すことにより、ソーニャが成長したことを表現しています。だから、四次元ポケットを回収した後、のび太たちに協力したりパラダピアの人々を助けたりしようとするのです。
そして、このソーニャも過去作のオマージュ(ポケットを失ったドラえもんが、ポケットを取り戻し本来の姿に戻る)だと考えられます。
あとレゾリューションにおけるソーニャの〇〇〇〇ですが、多分これも本来の姿に戻るために必要な行動だったのでしょう。
なぜならソーニャは改造されていたからです。もともとソーニャはポンコツ猫型ロボットでした。ところが、改造されてパーフェクト猫型ロボットになっていました。
そのため四次元ポケットを取り戻し、腕輪を外すだけでは元の姿に戻れなません。
〇〇〇を失う必要があったのです。だから、あのようなレゾリューション、そしてエンディング間近のアレになったという訳です。
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